「L字カーブ」とは、女性の正規雇用比率が20代後半をピークに低下していく現象を表した言葉です。「M字カーブ」とはどう違うのか、調べてみました。
L字カーブとは?
「L字カーブ」とは、内閣府が2020年〜2021年に開催した有識者懇談会「選択する未来2.0」において、問題提起された言葉です。
女性の正規雇用比率が、20代後半をピークに低下し続けていくという社会現象を表しています。
L字カーブの要因
2021年6月4日に発表された「選択する未来2.0 報告」では、「出産後に女性の正規雇用比率が低下する」と説明があります。
また、男女が家庭生活と両立しながら働き続けられる環境を整備するために、男性の育児休業取得や、職場における男女賃金格差の是正などにも言及があります。
L字カーブの要因が、出産というライフイベントだとの仮説に立つならば、共働き世帯における夫婦の家事育児介護時間の差を是正することは、非常に重要だと思います。
家事育児の分担を見直せばいいのか?
内閣府の「男女共同参画白書(令和2年度版)」によると、6歳未満の子供を持つ共働き世帯を見ると、その歴然とした差がみて取れます。
妻の仕事時間が約6時間10分、家事育児介護時間が約4時間10分なのに対して、
夫の仕事時間は約8時間45分、家事育児介護時間は約1時間20分です。
では男性が仕事はそのままに、もっと家事に時間を割けばいいのかというと、そうも言えないのではないでしょうか。
「父親1人がブラック企業化する」というリスクがあるからです。しかもこの社会問題は、もう5年以上前から指摘されていますが、改善は見られません。
会社の要求に応えるなら業務量や責任はそのままに、リモートワークを許さない、会議が多いといった、非効率な働き方にも従わざるを得ず、家庭では「平等な役割分担」で妻の負担を減らしたいから、頑張り続ける。
毎日深夜に妻子が寝静まった後で、食器を洗い、洗濯を畳む・・。たとえばそんな話も、聞こえてきます。
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これでは、妻の側も、夫の体調が心配になりますよね。「私はフルタイムで働き続けたいから、あなたももっと頑張って」と、言い続けられるでしょうか。
(家事をアウトソースしよう、仕組み化しようなどいろんな対策はありますが。)
他方、女性の就労環境においては、「マミートラック」、「ガラスの天井」などの壁がまだまだあったり、「フルタイムで仕事優先で働かなければ出世できない、そんな暮らしは嫌だな」と感じる場面が多いなど、
やはり、女性がライフイベントを機に「非正規」を選ぶ要因は、家事育児の分担のみならず、職場に多々あると考えられます。
M字カーブとは?
「L字カーブ」と同じように、女性の就労率問題を表す言葉に、「M字カーブ」があります。こちらの方が、よく知られているでしょう。
「M字カーブ」とは、20代後半から30代前半の女性の就労率が一時的に低下し、その後また緩やかに回復する社会現象を表しています。
ひと昔前と比べると、随分改善されていますね。
けれども、
- 欧米諸国と比べるとまだまだ低い
- 30代後半以降の女性の非正規雇用率が高い
- 正規と非正規の賃金格差
などが、日本の女性の就労傾向として指摘されています。
L字カーブとM字カーブの違い
このように、L字カーブとM字カーブは、いずれも「女性の就労率」のトレンドを表す言葉です。
最大の違いは、「M字カーブ」が女性の就労に関する全体傾向を捉えているのに対して、「L字カーブ」はその中でも正規雇用に焦点を当てているところです。
L字カーブとM字カーブから分かること
さて、L字カーブとM字カーブという言葉から分かることは、
日本は経済社会においては歴然とした男女格差があって、さらに子供を持つ共働き世帯にとって家庭と仕事を両立しづらい世の中だ
ということではないでしょうか。
さまざまな対策が講じられているとは思います。
でも、いますぐに光明が見えるのかというと、残念ながらそうではない場合がほとんどだと思います。
これからの女性の労働と働き方
では、どうするのか。
「個人」として、何ができるのか。
まずは、ここでご説明したような、社会的な状況を客観的に知ること。
それを踏まえて、「じゃあ、自分は、どんな生き方や働き方をしたいだろう」と、しっかりと考えることです。
正規雇用、非正規雇用、専業主婦、いずれを選んでもよい、という前提で、個人のキャリアは考えましょう。(社会課題と個人のキャリアの問題を混同しなくてよい。)
大事なのはあなたと家族が「OK」だと目線を揃えて、思えているかどうか。
そのためには、働くことを多角的に捉え直す必要があります。
最初に大切にしたいのは、あなた自身の価値観。どんな姿でありたいのか。
それから、職業適性。どんな特性・強みがあるのか、それを活かせる仕事は何か、把握すること。
働く時間や場所、報酬に関して、譲れない条件は何かを明らかにして、職場や転職先と交渉する用意をすること。
長期的には、デジタルやロボットによるビジネス変容、地球環境変動などの大きな波が押し寄せる中、いま思い描いている「ありたい姿」すら変わっていく可能性もあるのだ、と備える姿勢を忘れないこと。
人生100年時代といわれるいま、長く健康で暮らせるための努力を厭わないこと。
個人として考え、行動を起こしていく観点は、こんなにも、たくさんあるのです。
ファミリーキャリアを取り入れよう
だからこそ、「ファミリーキャリア」という考え方が重要になります。
ファミリーキャリアとは、家族としてキャリアを捉えて、家族みんなが自己実現を目指せるように、助け合いながらともに歩んでいくという考え方です。
ひとりで考えて「両立がつらい」と悩むよりも、もっと俯瞰した視点で「働く」ことを捉え直して、だからこそ家庭で情報を集めて、知恵を出し合って、助け合っていく方が、ずっと心強いし楽しいはずです。
そして、「家庭」という定義も、自分らしく見直しちゃってもいいと思います。
夫婦と子供という核家族だけが家庭じゃありません。
自分にとっての「ファミリー」を自ら定義して、互恵的(お互いにとってメリットがある)関係を築いていくことで、ファミリーみんなで達成感や幸せを感じられる人生を歩んでいけるとよいな、と思います。
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1回 20分/無料
【参考資料】
・「選択する未来2.0 報告」(内閣府|2021年6月4日発表)
(リンクはこちら)
・「選択する未来2.0 参考資料」(内閣府|2021年6月4日発表)
(リンクはこちら)
・「男女共同参画白書(令和2年度版)」第一節「家事・育児・介護」と「仕事」のバランスをめぐる推移
(リンクはこちら)
・「男女共同参画白書(令和元年度版)」1-2-3「女性の年齢階級別労働力の推移」
(リンクはこちら)