人生100年時代を生き抜くための指南書として注目を集める本「LIFE SHIFT(ライフシフト)」。家族のキャリア戦略(ファミリーキャリアプラン)をたてるうえでも、家族で目線を合わせるのにとても役立つ本です。4つの要点を図解・要約し、まとめました。(最終更新日:2023年2月13日・初回掲載日:2018年12月14日)
LIFE SHIFT(ライフシフト)とは
LIFE SHIFT(ライフシフト)は、2016年に発売された「人生100年時代の人生戦略」を示した本です。
本書のメインメッセージは、これからは無形資産の価値に目を向け、長く現役として活躍できるよう、自助努力して行こうということです。
そのためのハウツーとして、大切なことが提示されているので、4枚に分けて図解します。
1つめは、3ステージから脱却し、マルチステージ型の人生へ以降しようということ。
2つめは、ステージの移行期間は、ただただリフレッシュするのではなく、リ・クリエーション(再構築)しようということ。
3つめは、無形資産に目を向け、しっかりと構築していくこと。
4つめは、お金と時間の使い方を見直そう、ということです。
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)は、2016年発売当初から、ものすごい話題でした。
発売記念に、著者の1人であるリンダ・グラットン氏が来日して講演した際は、何百人も入るイベントスペースがぎっしり満席。(意外と年配の方が多かったのは印象的でした。)
「人生100年時代」背景にある事情
なぜこんなに、人々の心を惹きつけるのか。
その背景にあるのは、本書でも冒頭で触れられていますが、「人生100年時代」と呼ばれる長寿化現象です。
人生100年時代の背景には、いくつかのダイナミックな変革があります。具体的には・・・
- テクノロジーが進化する
- 人口が爆発的に増える
- 環境問題
- 食糧危機問題 などなど・・・
これからは、100歳や、それ以上長く生きる人が増えてきます。そして、医療の進歩により、健康に過ごせる期間もどんどん長くなります。
一方で、上記に挙げたような変革によって、就労環境やビジネスモデルは劇的に変化し、社会保障制度も見直さざるを得なくなると言われています。
つまり、働く期間が伸びることになるのです。
働く環境が劇的に変化していくなか、これまでより長く働かなければならない。
だから、生き方や働き方を見直し、豊かさとは何かを再定義していくべきだ、というわけです。
それでは、4つの要点を詳しく解説します。
LIFE SHIFT(ライフシフト)の要点とは
激変の時代を自分らしく豊かに生き抜くために、いくつかの有益な観点が提供されているのが、LIFE SHIFT(ライフシフト)という本です。
繰り返しになりますが、1つめのキーワードは、「マルチステージ」。2つめは、「ステージの移行」。3つめは、「無形資産」。4つめは、「時間とお金の使い方」です。
図解1. マルチステージの人生へ移行
LIFE SHIFT(ライフシフト)で最も重要なポイントは、「3ステージから脱却し、マルチステージの人生を歩もう」ということです。
2016年の発売直後、リンダ・グラットン氏が来日した講演でも、この「マルチステージ」の重要性は、特に強調していらっしゃいました。
これまでは、学生・会社勤め・老後という3ステージの人生を歩むことが一般的でした。しかしこれからは、寿命が伸び100歳まで生きる人生が当たり前になってきます。
働く期間が長くなることを想定すると、「1社に雇われて働く」以外の働き方も選択しながら、キャリアライフを構築していくことが必要になるのです。
新たな3つの選択肢とは?
マルチステージを構成する、新たな3つのステージが登場します。それは、「エクスプローラー」「インディペンデント・プロデューサー」「ポートフォリオ・ワーカー」の3つ。それぞれの特徴は下記のとおりです。
エクスプローラー
自分を日常の生活と行動から切り離して世界を探査し、自分の好きと得意を発見していくステージ。
インディペンデント・プロデューサー
職を探す人ではなく、自分の職を生み出すステージ。事業を売却し成功することより、ビジネスの活動自体が目的であることが多い。
ポートフォリオ・ワーカー
異なる種類の活動を同時に行うステージ。頭の働かせ方と仕事の仕方を状況ごとに柔軟に切り替えるスキルが求められる。
図解2. 移行期間の過ごし方に注意
ステージを変えるためには、移行期間が必要です。LIFE SHIFT(ライフ・シフト)では、この移行期の過ごし方について、提言がありました。
これまでの3ステージの人生においても、1社を退社して、次の会社に入社するまでにリフレッシュ期間を設けたり、留学や放浪などでインプットを強化する人もいたかと思います。
しかし、マルチステージの人生における「移行期間」とは、より戦略的な位置づけになります。長年の心身の疲れを取り除くことも大切ですが、エネルギーの再補充だけで移行期間を過ごすことはおすすめできない、と本書は指摘しています。
仕事から一時的に離れることで、スキルや知識が劣化したり、人的ネットワークを失うリスクがあるためです。
次のステージをより充実させるためには、「自分のリ・クリエーション(再創造)」が必要。つまり、無形資産の構築に重点をおくべきなのです。それでは、無形資産とはどのようなものでしょうか?
図解3. 「3つの無形資産」を構築しよう
人生100年を戦略的かつ豊かに全うするための方法として、マルチステージ人生への移行とともに、その必要性を強調しているキーワードが「無形資産」です。
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)では、「生産性資産」「活力資産」「変身資産」という3つの無形資産が提示され、その全てがマルチステージを生きるために必要な資産であることを伝えています。
これまでは、有形資産をより多く持つことが成功の証でした。金融資産、不動産資産、社会的な地位などです。もちろんこれらは重要ですが、有形資産の構築だけにとらわれていては、長い人生が立ち行かなくなるというリスクを知っておくべきでしょう。3つの無形資産の特徴は下記のとおりです。
生産性資産
生産性向上・所得増・キャリアアップに役立つ資産。スキル・知識や仲間、評判などの社会的評価など。
活力資産
肉体的・精神的健康と心理的幸福感を得るための資産。心身の健康、健康的な生活、友人、家族、愛など。
変身資産
大きな変化(AI化、スマート化、デジタル化などテクノロジーの進化、世界的人口増加、環境問題、宇宙開発…)に適応して、自らを変化させていくための資産。十分な自己理解、多様な人的ネットワークなど。
図解4. 時間とお金の使い方を見直そう
LIFE SHIFT(ライフシフト)では、3ステージから脱却してマルチステージの人生を歩むこと、そのためには無形資産の構築が不可欠であることを述べていますが、そのためにはお金と時間の使い方を見直す必要があることにも言及しています。
お金の使い方についてのポイントは、ざっくりいうと下記2つです。
金融リテラシーを向上し、お金に対する自己肯定感を高めること。そして、株の運用や生活コストの削減など、実生活においてセルフ・コントロールを行い、お金に対する自己主体感を高めることです。
時間の使い方についてのポイントとしては、下記2つが挙げられます。
余暇時間を増やし、自己のリ・クリエーション(再創造)を行うこと。いま話題の副業や学び直しなどはこれに当たるでしょう。もう1つは、社会が求める「時間の使い方」を知り、人生100年時代における人生の時間配分を決めることです。
高収入の人の方が労働時間(拘束時間)が圧倒的に長い、ということはよく知られています。また、SNS疲れという言葉に代表されるように、無意識的に可処分時間が取られてしまっていることなども見逃せません。
社会が求める(社会に帰属することで従わされている)「時間の使い方」を改めて意識し、自分が本当はどのように時間を使い、何歳の時にどうなっていたいのかを思い描いてみることが大切なのです。
人生100年時代は、「家族のキャリア戦略」が大切に
LIFE SHIFT(ライフシフト)の終章では、家族の在り方についても変化が起きることを知らせています。
結婚してパートナーや子どもを持つことが、自己の可能性を狭めるという不安をお持ちの方や、実際にそのように感じている方は、ぜひ読んでみて欲しい1冊です。
短期的には、自分のやりたいことができない、家に拘束されていると窮屈に感じるかもしれませんが、家族でLIFE SHIFT(ライフシフト)について話し合い、家族のキャリア戦略を長期的に考えていくことで、それぞれが地に足のついたキャリアプランを描くことができるのではないかと思います。
そのためには、まず「圧倒的な自己理解」が不可欠。
自分が大切にしたい価値観や、自分自身の強みなどについて、深く理解していれば、何が起きても自分にとってより良い選択をすることができるのではないでしょうか。
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