連載【共働き夫婦「家事育児の分担」を円滑に】vol.2では、共働き夫婦の家事育児分担のリアルについて、もう少し掘り下げます。
前回の連載vol.1では、共働き夫婦がともにキャリアを諦めず、また家族みんなが笑顔で過ごすために、「可処分時間」に焦点を当てた家事育児分担のあり方について、概要をまとめてみました。
共働きなのに家事育児は妻に任せっきり。家事育児の分担を巡って、衝突する、気持ちが離れる。
そういう状況が、少しでも改善されたら嬉しいなと思い、
今回は、そもそも、共働き世帯が置かれている状況について、客観的な数値データから現況理解を図ってみます。
データを知って、ちょっぴり冷静に
男女平等参画白書(平成30年版)に、共働き夫婦の実情を示す、面白いデータが掲載されています。
仕事と育児の両立や家事育児の分担に関する様々な記事で、よく使われているので、すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
こうしたデータを知っておくと、ちょっぴり冷静になれます。
平均値を知ると、「わが家の状況」を客観的に評価できるからだと思います。
「このイライラは妥当だ」とか、「どういう数値なら許容できるか」など、考えを進めるために、インプットしておくことをおすすめします。
「共働き」はすでに当たり前
まずは、共働き世帯数の推移を見ていきます。
1980年代には、専業主婦がいる世帯が大多数でした。
共働き世帯数が、初めて専業主婦がいる世帯数を上回ったのは1997年。その後、右肩上がりで増加しています。
2019年には、共働き世帯数は1,245万世帯、専業主婦がいる世帯数は575万世帯となり、ここ数年、両者の差は拡大傾向です。
つまり、「共働き」はすでに当たり前。今後もそれは変わらないでしょう。
M字カーブも改善傾向
女性が、出産や育児などのライフイベントで仕事を辞めてしまい、女性の就業率が30代で凹む。
その後、子育てが一段落する40代くらいで再就職するため、女性の就業率が回復する。
この「M字カーブ」もかなり改善されてきています。
女性は非正規で働く人が多く、30代半ばなどで子連れ転職を目指すも、正規雇用されにくいなど、
女性の就労継続については様々なハードルがあり、一方で男性はそうした状況を知らない・気づいていないなど、課題も山積ですが、
なにはともあれ、今後は、女性がライフイベント後も働き続けることを前提に、家事育児分担のあり方をアップデート。これだけはハッキリといえます。
家事育児は女性に偏りすぎ
というのも、日本の女性には家事育児があまりにも偏りすぎています。
6歳未満の子どもを持つ夫婦の、1日あたりの家事育児時間を比べると、夫:1時間23分、妻:7時間34分という結果でした。
諸外国でも、女性に偏りがちであることは、別の議論が必要でしょうが、日本の場合は、諸外国と比べてもその偏りが、かなり顕著です。
この背景には、長時間労働、有給取得率の低さ、男性の育休取得率の低さ、性別役割意識(アンコンシャスバイアス)など、様々なことがあります。
例えば、スウェーデンやノルウェーでは、男性の育休取得率は約9割で、数ヶ月単位で仕事を休むことも一般的です。長い間、家事育児に専念して過ごす生活のなかで、自分なりの家事育児を模索することができ、復職後も家事育児に積極的に関わりやすくなるといいます。
一方、日本の男性の育休取得率は約6%。子どもが生まれて、家事育児の両立がスタートした時点で、家事育児への関わり方をうまく確立できず、“蚊帳の外”にならざるを得ないためにいつまでもお手伝いさん状態、その結果、家事育児が女性に偏りすぎているのかもしれません。
共働き夫婦が家事育児の分担やお互いの可処分時間を見直す際、「女性に偏りすぎ」という事実を、共通認識にすることは、話し合いの第一歩になるのではないでしょうか。
※内閣府 男女平等参画白書(平成30年版)と、独立行政法人労働政策研究・研修機構 専業主婦世帯と共働き世帯 より数値を引用して作図いたしました。
家族みんなが笑顔で過ごすために
とはいえ、いきなり家事育児時間の平等を目指すことは、いまはまだ、ちょっと違うのかなと、個人的には思っています。
職場に世代間ギャップがある場合、男性は、職場では滅私奉公的な働き方が、家庭では家事育児の平等な分担が求められて、「一人ブラック企業化」してしまうリスクがあるためです。
お互いの職場環境や職業上の要求もふまえて、家族みんなが笑顔になるための折り合い点を見つけることが、いちばん重要なのではないでしょうか。
vol.3 — 世代によって異なる「当たり前」のかたち は、こちらに掲載。
▼連載初回は、「共働き家事育児」の総論(まとめ)を図解しています。