連載【共働きの家事育児分担3つのパターン】では、共働き夫婦がともにキャリアを諦めず、家族みんなが笑顔で過ごすことができるよう、「家事育児の分担」を円滑に進めるためのヒントを、全10回の記事でお伝えしていきます。
vol.1となる本稿では、ざっくりと要点を解説。ポイントは、「可処分時間」に焦点を当てることです。詳しくは、各段落ごとに記事化した連載にまとめます。(2020年9月23日更新/初回掲載日:2021年5月20日)
共働き夫婦の家事育児分担のリアル
共働き世帯は、右肩上がりに増えてきました。
1980年代には、専業主婦がいる世帯が大多数でしたが、いまや、共働き世帯は当時の約2倍になっています。
しかし、出産や育児などのライフイベントを経て、女性が働き続けるにも関わらず、家事育児は女性にあまりにも偏っています。
これでは、共働き世帯の家事育児分担で、“妻がキレる”のも無理ありません。
- ヒント1:共働き夫婦の家事育児分担は女性に偏りがちだと認識しよう
世代によって異なる「当たり前」のかたち
しかし、共働き世帯といっても、みんなが同じ不満や課題を感じているわけではなさそうです。
ざっくりいうと、40代以上の世代と、20〜30代とでは、家事育児分担におけるスタンスが異なる傾向にある。
取材だったり、キャリア相談をお受けするなかでも、そんな実感があります。
その理由の1つとして考えられるのが、「家庭科の男女必修化」です。
家庭科が男女ともに必修化されたあとの世代は、「家事は男女関係なくやるもの」という意識が醸成されやすいようです。
年の差カップルで、夫さんの家事育児参加に不満がある、という場合には、こうした事情もあるのかもしれませんね。
- ヒント2:家事育児に対する考え方の世代間ギャップを認識しよう
家事育児分担のよくある打ち手3つ
共働き世帯の家事育児分担のハウツーについては、検索するといろんな方法が出てきます。
家庭運営とはそもそも、非常に個別性の高いテーマ。万人に共通する解決法はないのかもしれないですが、
よくある打ち手としては、このような3つのパターンに分類されるのではないでしょうか。
1つめは、家事育児スキルの低い夫を、妻が指導・マネジメントするパターン。
「褒めて伸ばす」とか、「細かいところに不満はあっても、まずは感謝する」などのTIPSも、よく見かけます。
2つめは、タスクを完全に分けてしまうパターン。すごく効率的に、家事育児がまわりそうです。
タスクを割り振る前に、「家事育児 To Doの洗い出し」が必要になるので、これを一緒にやるだけでも実りがありそうです。
3つめは、外部やロボットにアウトソースするパターン。
じいじ・ばあば、保育サービス、家事代行サービスなどに、家事育児を手伝ってもらう方法や、時短家電「三種の神器」などをフル活用して乗り切る方法ですね。
わが家は、じいじ・ばあばが遠方なので、キッズラインやタスカジ、食洗機さまなどに、お世話になっております。
が、詳しくは改めて書く予定ですが(長くなるので)、「いずれの打ち手も万能ではない」つまり、一長一短があることを意識すべきだと思っています。
- ヒント3:よくある家事育児分担メソッド、それぞれの一長一短を知ろう
家事育児をタスクと捉えない幸せ
家事育児分担をどうしたらよいのか、ものすごく悩んだ末にたどり着いたのは・・・
家事育児の分担を「タスク」だと捉えないことで、得られる幸せがあるということ。
いま、コロナの外出自粛で、ほとんど家で過ごすなかで、このことを改めて実感しています。
食事もおやつも、外食は一切せず、自炊かテイクアウト。毎日、食事のメニューを考えるのとか、確かに疲れます。
でも、一緒に食卓の準備をする時間や、そこで生まれる家族の会話によって、「人生で本当に大切にしたいこと」を改めて考えるようになった人も、多いようです。
私自身も、「丁寧な暮らし」や「生活力」を子どもに意識させる、よい機会になったと感じているのですが、
これは、家事育児を「タスク」だと捉えないから気が付けた幸せなのかなと思います。
きちんと暮らす力を付けさせることは、人生100年という心身のメンテナンスが極めて重要になるこれからの時代、とても大切なことです。
家事育児をうまく効率化することと、豊かな生活のための手間を惜しまないこと。
これからの共働き家庭に必要なことは、このバランス感覚であるように思います。
- ヒント4:家事育児から得られる幸せに気づき、家族でそれを共有しよう
家事育児分担と「可処分時間の不公平感」
そうはいっても、自分自身に没頭する時間がなければ、バランスよく家事育児と向き合うことは難しいですよね。
共働き夫婦が家事育児の分担で衝突してしまうのは、ずばり「可処分時間の不公平感」から、ではないでしょうか。
お互いが自分の仕事ありきで暮らしていては、どちらかが我慢したり不満が募ったりして当然です。
家事育児の分担を見直す際には、1日24時間から睡眠と家事育児という必要最低限の時間を差し引いて、お互いの可処分時間をいかに使うか、という視点を持つことをおすすめしたいです。
- ヒント5:「1日24時間」を納得して使えるよう、互いに心を配ろう
ここでのポイントは、「可処分時間」のなかで、所定労働時間と残業時間をはっきりと区別することです。
可処分時間を、4つの構成要素で整理してみましょう。
お互いに仕事を持って、キャリア開発や自己実現しようと思っているのだから、この4つはいずれも重要です。
可処分時間の不公平感が募るのは、この「WANT」の項目。
残業し放題、仕事仲間と飲みに行くなどはもちろん、心身のメンテナンスや、将来的なキャリアシフトを視野に入れた学び直し、しっかりと自分自身を見つめるなど・・・
「やりたいことは無限にあるのにとにかく時間が足りない」のが、共働き夫婦です。さらに、子どもの教育に伴走するなどの時間も、必要になってきます。
- ヒント6:「できれば ××× したい」を、どちらか一方が我慢するのはNG
家族みんなが、どんな「WANT」を持っているのかオープンに話し合って、いまは誰の何を優先すべきなのかを、家族単位で決めて行くことで、不公平感は解消されていきます。
(そうすれば、“妻がキレる”も減ってくるはず・・・! 私もそうでした(笑)。)
- ヒント7:家族みんなの「できれば ××× したい」をまずは持ち寄ってみよう
共働きの家事育児分担3つのパターン
共働き夫婦がともにキャリアを諦めず、また家族みんなが笑顔で過ごすため、「可処分時間」に焦点を当てて、家事育児分担のあり方を見直すには、まずは「家族のありたい姿」を話し合うことから。
家族の価値観をベースに、毎日の暮らし方、そして可処分時間の配分を、設計して行くのです。
わが家の場合を例に、説明します。
わたしたちは、「毎日の食卓を思い出にする」ということを、いちばん大切にしていて、食事の時間を基準に、日々の過ごし方を設計しています。
こちらが、基本パターン。
ちなみに、「朝食の準備は夫」というルーティンが確立してから、わが家はかなり平穏になりました(笑)。
基本パターンが決まってから、変形パターンを2つくらい用意しておくことで、長期的にも、暮らしが安定してきたと感じています。
どういう時に、どの変形パターンでいくかなども、つかめてきました。
まずは基本パターンを、しっかり決めることが肝かと思います。
その意思決定のなかで、各家庭の折り合い点を見つけることこそ、家族でいることの醍醐味なのかなと。
- ヒント8:家族が集まるルーティンを、日次や週次で決めてしまおう
- ヒント9:仕事・学習の進捗や「できれば ××× したい」をルーティンの中で共有し、家族として誰の何を優先して応援するか、過ごし方をこまめに調整しよう
人生の終わりに、何を思い出したいか
「毎日の食卓を思い出にする」に取り組み続けて、1年以上経ちました。
続けるなかで実感するのは、
子どもが15歳になるまで、朝夕のご飯を毎日1時間ずつ、家族みんなで食べたとしても、10,000時間くらいしか一緒にいられないということ。
100歳まで生きるとして、それって、生きてる時間の1%しかない。
でも、いつか死ぬ時に私が思い出したいのは、こういう時間を過ごしたことです。
そして、家族時間への向き合い方も含めて、後悔しない生き方をしよう、と「私、頑張ったな!」と思いたいです。
時間の使い方や、その目的「なんのために生きているのか」に意識を向けることは、とても大切です。
このコロナで巣篭もりを強いられている時間も、少しでも多くの家庭がそれぞれによい思い出にできたらいい。そんな想いで、この記事を書きました。
各段落の詳しい内容は、別記事で書く予定ですので、よかったらそちらもお読みいただけると嬉しいです。
- ヒント10:人生を終えるとき何を思い出したいか、考えてみよう
本稿は、連載【共働きの家事育児分担3つのパターン(全10回)】vol.1となります。次の記事は、vol.2「共働き夫婦の家事育児分担のリアル」です。よろしければ合わせてお読みください。