フィンランド政府は2020年4月24日、同国初となる子ども向けの記者会見を、オンラインで実施した。7歳〜12歳の子どもが記者を務め、Sanna Marin(サンナ・マリン)首相、Li Andersson(リ・
フィンランドは昨年、「世界最年少34歳の女性首相」が誕生したことで日本でも話題になった。新閣僚の半分以上が女性という点でも、かっこいいなあと注目していた。
(ちなみに、同国大使館によると、注目すべきはその事実自体ではないようだ。こちらの記事が参考になるので貼っておく。)
フィンランドの子どもたちは、コロナウイルスについて、どんなことを政府に質問したのだろう?
日本の子どもたちにも、ヒントになる話題が上がっていたのだろうか?
そんな疑問が湧いて、フィンランド大使館に問い合わせてみた。本稿では、教えていただいた情報をもとに、本イベントの開催概要と、「子どもたちがいますべきこと」について考えたことを記す。
「キッズ記者会見」実施
フィンランドでは2020年3月中旬以降、ほとんど全ての学童が、遠隔学習をしているという。
朝9時から午後1時までなどの、教師から指示されたスケジュールで、カリキュラムに沿って学習しており、子どもたちはすでに、クラスのビデオ会議に参加したり、課題をオンラインで提出することにも慣れているそうだ。
約1ヶ月が経過したところで、フィンランドでも初めての試みとなる、「キッズ記者会見」を実施した。
記者は、7歳〜12歳の子どもたち。コロナウイルスやその影響について、子どもたち自身が抱く不安や懸念、疑問に、サンナ・マリン首相らが直接回答した。いつもの記者会見よりもやや柔らかな表情が印象的だ。
記者役は、本イベントを企画したパートナーである、子ども雑誌Apuとフィンランド公共放送局のYleと、ヘルシンキ新聞の子ども向けニュース部門が選抜した。(YouTubeには約40分間の動画がアップされており閲覧も可能。英語ではない。)
まず最初に、手洗いの徹底やソーシャルディスタンスを保つことが、引き続き必要であることなど現況の説明があり、キッズ記者との質疑応答へ移った。
子どもたちがいますべきこと
挙げられた質問と回答をいくつか紹介する。
“いつ学校に行くことができますか?”
今年の春後半か、秋になるか、専門家の意見を聞いて確認中であることを、アンデルソン教育大臣が回答した。
“フィンランドの状況はよいですか?”
他国と比べるとよい方だとマリン首相は答えつつ、みんなを守るために全力で取り組んでいることを添えた。
“コロナが終わり全てが正常に戻るまで、どれくらいの期間になると思いますか?”
アンデルソン教育大臣は、「よい質問だけれども、回答はとても難しい」と受け止めつつ、かなり長い間コロナを意識する必要があるとの見解を示した。
手洗い、ソーシャルディスタンス、祖父母を訪問しないことなどのルールを、長い間守らなければならないことを、秋になってもそれが続くことを示唆しながら伝えたことは、子ども相手だからといってお茶を濁したりしないで事実を伝え、共に頑張ろうと呼びかける姿勢は、とても大切なことだと考えさせられた。
ほかにも、“今年の夏は遊園地に行けますか?” “いつ祖父母や年をとった親族を訪問することができますか?”といった質問が挙げられた。
最後の質問は、
“フィンランドのために、何ができるでしょうか?”
この質問に対しマリン首相は、2つの重要なことを提示している。
- 遠隔学習を続けること
- 親戚や友人など、他者と連絡を取り合うこと
子どもの仕事は学びである。そのことを一国の首相が明言することの影響は大きい。
アンデルソン教育大臣やハンナ・コソネン科学文化大臣からも、「クラスメートと長い間話していないことや、友達の誰かが落ち込んでいることに気がついたら、何か手伝えることはないか尋ねてみることはとてもよいことだ」「私たちはお互いを元気づけることができる」といったコメントがあった。
私が最も印象的だったのは、キッズ記者との質疑応答のなかで、「あなたはもうたくさんのことを頑張っている」「遠隔学習は簡単ではないけれど」など、子どもの苦労に寄り添う優しさだ。親としても参考にしたいと思う。
日本では、スーパーに家族連れで行く、公園で子どもたちが3蜜で遊ぶ姿も、まだ見受けられる。
(公園は屋外だけど、遊具によっては密室のようになるスペースもあるし、そういう秘密基地のような空間を多くの子どもは好きだし、全力で遊ぶ子どもにマスク着用を守らせるのは難しい。)
それぞれに事情や考えがあってのことだと思う。けれども、ちょっと心配になる。
いま子どもたちが磨くべきことは、さまざまな不自由さに負けず学習を続ける胆力と、周囲の人や世の中の出来事対してより敏感になり、自分事として引き寄せる力ではないだろうか。
今夜の食卓では、「なぜ外出しなければならないのか、なぜソーシャルディスタンスを保たなければならないのか」子どもとも一緒に話し合ってみよう。
毎晩ニュースを見ているけれど、感染者数に一喜一憂するだけではなく、そこから想像力を働かせることはできるはずだ。
コロナ疲れ、自粛疲れ、ストレスも正直あるけれど、そんななかでも「他者への思いやり」をもっと意識して行動に移せるきっかけを、親子揃って掴みたい。そんな風に考えさせられるキッズ記者会見だった。
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※全画像クレジット:Finnish Government
フィンランド大使館に許可をいただいて掲載しています。
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(参考資料)
・大使館オフィシャルページ:原文はこちら
・Finnish PM holds press conference for children :原文はこちら
・KIDS ASK THE FINNISH GOVERNMENT QUESTIONS IN CORONA INFO SESSION:原文はこちら
・フィンランド首相が子供向けの「記者会見」を実施 子供たちは何を尋ねた?:原文はこちら