詩集「おんなのことば」:心に静けさを取り戻せる一冊

女性は社会に出て働き始めると、一気に慌ただしさが増すのではないでしょうか。本書は、自分自身を見つめ直すためのきっかけを、手軽に持てる詩集です。

男性社会に飛び込むピンとした緊張感、朝晩のメイクと洗顔にストッキングやヒール靴、結婚や子どもを持つことへのプレッシャー、そしてワークライフバランスについての悩みなど、「女性」だけが背負うの慌ただしさの多いこと・・・。

「おんなのことば」の作者は、茨木のり子さん。大正から平成を生きた日本を代表する詩人さんです。多くの詩集やエッセイ集を出版されていますが、この「おんなのことば」は、1994年に童話社から出たもので、「自分の感受性くらい」や「わたしが一番きれいだったとき」など特に有名な作品が収めています。

私も、この詩集の装丁に惹かれて大学生のときに購入して以来、折りに触れて読み返しています。かれこれ20年近く連れ添った詩集です。

慌ただしい日常のなか、ぽっかりと空いた夜の時間。立ち止まる余裕すらない日々でのなか、電車に揺られながら。

あれをやらなければ、これをいつまでに・・・と、あれやこれやで溢れかえった心が頭が、すうっと静かになるのですから驚きです。数分間、ひとつの詩に触れるだけで。

なかでも、「自分の感受性くらい」は、本当におすすめです。

「自分の感受性くらい、自分で守れ、ばかものよ」と締めくくられる下りには、ガツンとげんこつを頂いてシャンとしたような気持ちになります。何度読んでも、背筋が伸びる、不思議な力を持つ作品です。

また、「おんなのことば」最後に収められている「汲む」も素晴らしい。

「人を人とも思わなくなったとき 堕落が始まるのね 堕ちてゆくのを 隠そうとして 隠せなくなった人を何人も見ました」

この言葉には、私もそんな人間になりかけていないかと自問自答し、胸が苦しくなることもありました。

大人になると叱ってくれる人が少なくなる、といいます。それは、適切に叱ってもらえるほど他人に自己開示できる時間も、その必要性を感じるゆとりも、どんどん減ってしまうからではないでしょうか。

それに職場では、基本的に、ミスをしないよう、怒られないよう、との意識が働きがちですから、プライベートくらいは、誰かに叱られたり批判されたりは避けたいですよね。

でも、心のどこかで、「私、魅力的といえるかな?」「このままじゃいけない」と焦ったり悩んだりする女性は多いですよね。

そんなときは、誰かにその想いを聞いてもらって発散するのではなく、「おんなのことば」を片手に温かいハーブティーでも飲みながら、じっくり内省するのもよいのではないかなと思います。

『Becoming』ではキャリア相談を承っております。
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