「夫に転職を反対された」2児の母・時短で働くワーママさんの相談事例

6年勤めた会社を辞めて、転職をしようと決意したワーママさんから、ご相談がありました。それは、「夫に転職を反対された」というもの。企業理念や職種にも納得した企業から内定をもらい、承諾する前にまさかのパートナーからの“旦那ブロック”。時短で働くワーママさんからよくあるご相談なので、アドバイスした内容をご紹介します。結果、旦那さんから転職OKと前進したようです!

ワーママA子さんが、子連れ転職を決意した背景

A子さんは、都内の企業(上場企業のグループ会社)で働く、2児の母。第1子がまだ乳児だった頃に、時短で契約社員として同社で働き始め、正社員登用や第2子出産を経て6年間勤務しました。

通勤時間は、片道約1時間。10時から17時の時短勤務。途中からは、働き方改革の流れもあって、テレワークが許可されましたが、業務都合上、退勤後に自宅で残業することもしばしばあったようです。

チームメイトに恵まれ、働きがいを感じるものの、「成長感」には物足りなさも。また、「業界の先行き」にも不安があり、思い切って以前から関心のあった職種にチャレンジしようと、子連れ転職を決意したそうです。

30代後半、育児のため時短勤務。希望する職種には、未経験からのチャレンジ。選択肢は多くなかったけれど、企業理念や職場環境、働く人にも魅力を感じる企業が見つかり、「これは」と思い応募しました。

1社目にして見事に内定。スタートアップ企業で、将来的には上場を目指しているとのことで、ベンチャーで働くことについて色々と調べながら、内定承諾しようと考えていた矢先、旦那さんから難色が示されてしまったのです。

「夫に転職を反対されました」

珍しく、A子さんから朝一でLINEメッセージをいただき、驚きました。「夫に転職を反対された」とのこと!

もともと転職には賛成で、キャリアアップを応援してくれていたという旦那さん。面接がある日は、子どものお迎えや夕食を担当して、転職活動を支えてくれていたそうですが…

「年収が安すぎる。キャリアアップになっていない。」

旦那さんの懸念ポイントは、年収でした。「転職するのはいいけれど、3040代で年収を上げておかないと、その先ずっと上らないのでは。」A子さんは、人材紹介会社に勤める、大学時代の先輩からも同様のアドバイスがあったといいます。

給与や委託料を交渉する際、前職などこれまでの給与をベースに交渉することは多いので、私も「一理ある」とは感じました。

A子さんによると、内定先から提示された年俸は、フルタイム400万円台から、時短控除を引いて300万円台とのこと。時短とはいえ週5日・都内勤務の金額としては、「新卒みたい」という旦那さんの(辛辣な?)コメントも、おっしゃる通りかもしれません。

とはいえ、「スタートアップ企業・管理職ではない・時短・未経験職種での採用、という条件を考慮すると相場」な気もします。物事は捉えようで、同じ金額を見ても、思うことは人それぞれ。納得する人もいれば、腑に落ちない人もいるのですね。

それは、別々の物差しで、年収を評価しているためだと思います。

旦那さんは、「いま転職するなら、年収上げておかないとダメでしょ」と思っている。A子さんは、「子育て期間中は年収ではなく、経験と職場環境を重視」と考えている。

A子さんの物差しが、旦那さんに理解されていないことが、ふたりのすれ違いの原因だと考えて、年収に関する客観的な情報を提供しました。

旦那ブロックを突破するために、提供した情報

「30代後半の転職なのだから年収を上げないと」という要望も、理解はできるのですが、A子さんのキャリアニーズは、「未経験から希望する職種にチャレンジして、この先数年で経験を積むこと」です。

未経験職種への応募では、年収は上らない(もしくは下がる)こともよくあります。そして時短控除。私には、旦那さんの「いま年収を上げないと」という要望は、ハードルが高いと感じました。

同時に、少し悲しくなりました。平日はA子さんが、ほとんどの家事育児を引き受けながら、時には自宅で持ち帰り残業もしながら、今後のキャリアを真面目に考えていることを知っていたから。

(旦那さんは、職業柄、またプロジェクトのピーク期的にも、平日夜に早く帰宅することが難しく、A子さんはそんな旦那さんのキャリアを応援したいと話していました。)

「そもそも男女で賃金格差が存在することを旦那様はご存知でしょうか。」

私は、こうきり出しました。そして、『平成29年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省)』や、『労働力調査2019 (総務省統計局)』といった、客観的な数値データについて、情報提供しました。

「平均値にはなりますが、厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査によりますと、35〜39歳男性の賃金(ざっくりいうと手当は含まない所得税控除前の月収)32.4万に対して女性は25.4万円です。」

「非正規を含むためという見方もありますが、総務省の労働力調査によると、正規従業員の年間収入を男女で比較すると、男性が300〜500万がボリュームゾーンなのに対して女性は200〜400万がボリュームゾーンになります。」

「客観的な調査データを共有しつつ、戦略をもう少しブレイクダウンしてみてはいかがでしょうか。3年の間に〜〜な人材を目指す、その次のステップとしては子どもが●歳のときに年収●円を目指す、或いは、いまいこうとしている会社の賃金テーブルによると、管理職になれば●円になる、など。」(A子さんへのLINEより引用)

ジェンダーギャップを容認するわけではありませんが、女性の年収は一般的に男性より低いという、現実世界の傾向をを踏まえて、家族で戦略を話し合うことは合理的だと考えます。

子育て期間中の「長期的なキャリア戦略」

もちろん、A子さんの旦那さんが言うとおり、年収を上げることを優先する選択肢もあり得ます。ただし年収を上げるには、年収相場の高い金融などの業界の大手企業に勤め、管理職へ昇進するのが王道となるでしょう。

「時短管理職」も昨今話題なので、職場の受け入れ環境が整ってきた企業もあるのだと思います。一方で、働き方改革によって中間管理職だけがブラック化する現象も、問題として指摘されています。

ちなみに、エバンジェリストの西脇資哲さんがツイートしていた記事にあった、「近代の勤務環境は24時間稼働です。」という一説が個人的には名言すぎたので、貼っておきますが、多くのトップレベルカンパニー(特にIT)の働き方って、報酬も高いけどそういう傾向。

とはいえ、ワークアズライフという言葉も、最近はよく聞かれます。変化スピードの速い時代だからこそ、ワークとライフを別々に切り離すよりも、一体として捉えるほうが効率がよい気がしますし、仕事と暮らしの垣根をなくして関心事を追求する生き方は、私も魅力的だなと思います。

要は、124時間を、いかに過ごしたいか。どのように暮らしたいか。その積み重ねの先に、どんなキャリアを築きたいか。

自分個人としての希望、家族の一員としての役割など、いろんな角度から考えて、一人ひとりに最適なこたえを出していかなきゃいけない時代なのではないでしょうか。

A子さんが出した結論も、とてもすてきだなと思いました。

「子育ての後の10年は年収より、働きやすさ(就労の継続しやすさ)、経験を重視。手が離れるであろう10年後にはフルタイムに戻したい。40代後半から年収を上げていく。」

旦那さんには、私から情報提供した一次情報を共有して「世の女性の年収への理解」を補足したうえで、長期的にキャリア開発を考えていることを伝えたところ、「そこまで考えているなら、いいと思うよ」と折り合い点が見つかったそうです。

おわりに

A子さんから後日、「お互いにとって、キャリアアップとは何か、話ができていれば良かったのかもしれない」と伺ったことは、印象的でした。

男性は、女性が置かれている就労環境を、知らないことが多いです。逆もまた然りですが。「キャリア観」は、日常生活で話題に上がりにくいもの。今回はお互いの物差しの調整役として、ご相談いただけてよかったなと嬉しく思います。

今回のテーマは、年収と長期的なキャリア戦略についてでしたが、夫婦でお互いの転職を反対する理由は、ほかにも様々あるのではないでしょうか。

理由別に、伝えるべき情報は異なります。お困りの方や、家族のキャリア戦略に興味がある方は、ぜひお気軽にお問合せくださいね。

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