連載【共働き夫婦「家事育児の分担」を円滑に】vol.9では、1日の時間の使い方に焦点を当てて、家事育児分担の折り合い点を見つけていく方法を、3つのパターンで整理してみました。
そのためには、まず「家族のありたい姿」を話し合うことから。
家族の価値観をベースに、毎日の暮らし方、そして可処分時間の配分を、設計して行きます。
基本パターン:毎日の食卓を「思い出」にする
わが家の場合を例に、説明します。
私たちは、「毎日の食卓を思い出にする」ということを、いちばん大切にしていて、毎日の食卓を家族で囲むことを中心に、普段の生活の基本パターンを決めました。
そして、基本パターンを応用する形で、2つの変形パターンを用意しています。
こちらが、基本パターン。
朝7時と夕方19時の食事の時間は、毎日の家族の合流時点です。
ご飯を食べながら1日の予定や想いを話し合ったり、1日の出来事を共有し合うことで、刻一刻と変わる家族みんなの状況をお互いに把握できるし、何より話すことでリラックスできます。
新しいプロジェクトがうまく行きそうだとか、次は何を勉強したいとか、◯◯ちゃんと喧嘩しただとか、いろんなことを同じレイヤーで話すので、会話はかなりカオスですが、子どもも大人も関係なく対等に話し合えるのはよいなと思っています。
また、子どもに、「家族には何を話してもいい(むしろ、日々の出来事を報告するのが当たり前)」と刷り込んでおきたい、という目的もあります。いじめや勉強など、これから子どもが困りごとを抱えたとき、少しでも子ども本人から話しやすくなればよいなあと思います。
ですので夫も私も、万難を排して、仕事を終わらせ帰宅します。
終わらなかった仕事は、急ぎの場合は食事の後すぐに、当日中でよい場合は子どもが眠っている間にこなします。
たかが1食30分程度の時間ですが、人生の質は確実に上がると感じています。NPO法人ファザーリングジャパンでも、“トモショク”を推奨しておられるようですね。
ただ、毎日の食卓を囲むことが、そのままゴールなのではありません。
暮らしの中で、何を大切にしたいか、どんな家庭でありたいか、まずは話し合って、
「これを大事にしたいね」と決めたことを、みんなで守って大事にすることが、一番なのだと思います。
蛇足かもしれませんが、朝夕のご飯を家族みんなでいただくためのTIPSもまとめてみました。
TIPS:
- 「朝夕のご飯を一緒に食べる」を軸に、スケジュールを調整する
- スケジュールの確認は分単位で(◯時頃、など曖昧なのはNG)
- 就業時間内に終わらなかった仕事は、基本的には子どもが寝たあとか早朝にやる
ちなみに、子どものお迎えや夕食は、私が担当することが多いので、「朝食の支度は夫」というルーティンが確立してから、わが家はかなり平穏になりました(笑)。
いまでは、朝食の支度をしながら、夕食の仕込み(材料を茹でておく、炊飯をセットしておく)なども対応可になったので、家事育児はやっぱり“場数”なのだと思います。
そのためには、vol.4でも触れましたが、どんどん権限移譲していくことが大事です。
変形パターン1:合流時点を決めて、一時的に離れる
基本パターンが決まってから、変形パターンを2つくらい用意しておくことで、長期的にも、暮らしが安定してきたと感じています。
こちらが変形パターン1つめです。
基本パターンからの変更点は、朝夕1回ずつあった「合流時点」を、1回に減らしたこと。
基本パターンでは、妻の可処分時間が少なくなりがちなので、必要に応じて「早出」して調整。朝ごはんも好きなカフェなどでいただきます。
朝の一番頭が働く時間を、子どもの送迎やお世話でイライラせず、自分のことに集中できるため、生産性も上がりますし、ストレスもかなり軽減されます。
「何時間あれば、◯◯を終えられる」「クリエイティブな仕事に集中したい」「溜まってしまったストレスを解放したい」という場合におすすめです。
また、夫婦どちらかに夜に予定があるときもありますよね。
例えば、セミナーやネットワーキング、納期前、業務で新たな知識が求められて調べ物が必要など、期日をずらせない用事がある場合です。
この場合は、どちらかが夕方〜夜のワンオペで乗り切ります。
終わりの時間を気にせず、やりたいことに没頭できる夜って幸せだなと思いますし、ワンオペ側も子どもと一緒に眠って日頃の睡眠不足を解消できるというメリットもあります。
とはいえ、夜の可処分時間を長くする、イコール、睡眠を削ること。翌日まで疲れた残ってしまう、諸刃の剣でもありますね・・・。曜日や前後の予定は選ぶべきかもしれません。
TIPS:
- ワンオペしてもらったあとは、成果報告とお礼(予定していた業務が終わった、イベントでこういう学びがあった、などの報告は結構大事)
- ワンオペが大変でも、子どもには「お仕事頑張ってるから応援しようね」とポジティブなことを言う(決して文句は言わないで、やってることを褒める)
- 夜の外出から帰る時は、子どもが完全に寝た頃に(寝かしつけの邪魔をしない)
変形パターン2:24時間戦士化することを応援する
こちらが変形パターン2つめです。
一時的に、毎日の暮らしから、合流時点をなくしています。
もはや食卓を囲む時間も惜しいほど激務、という時期だって、働いていれば当然あるわけです。
そういうときは、黙ってプライベートの一切を放棄することを許しましょう。
ただ、終日、あるいは連日に渡って、ワンオペする側はとても大変なので、「いつからいつまで」「なんのために」「終わったら◯◯しよう」など、背景や見通しなどの共有は大切です。
私も、資格取得のための受講、イベントや取材などの遠方出張や執筆業務など、さまざまな理由で24時間戦士化することがあります。
予定が分かった時点で相手のスケジュール(忙しさ)をヒアリングし、ご飯の作り置きをするなどワンオペ側の負担軽減に努めたり、子どもにも事前に協力をお願いしておくなど、工夫するようにしています。
逆に、夫が語学留学でセブ島に行ったり、(現業とは全く関係のない)ドローンのイベントで北海道に行ったり、ということもありました。数年間の色々な取り組みを経て、パターンが出来上がってきたんだなと、感慨深いものがあります。
TIPS:
- 家族全員が健康に生き抜けられれば、それでよしとする
- 可能な限り家事は手を抜いて、睡眠時間を確保する
- 子どもが体調不良の場合の対応は、事前に相談して決めておく
- 24時間戦士にも、外でもできるピンポイントタスクをお願いする(ネットショップで日用品の注文をする、シッターさんの手配をしてもらうなど)
「不測の事態」対応もスムーズに
基本パターンと変形パターンが、だいたい決まってくると子どもが体調を崩したり、法事や出張で不在になるなど、不測の事態への対応もスムーズにできるようになります。
vol.8では詳しく書きましたが、お互いの可処分時間に配慮して、家事育児の分担をしていくためには、24時間から睡眠と家事育児を引いた時間を互いに有効活用しよう、という考えが前提です。現業の仕事ありきで、残りの時間を可処分時間と捉えるのではありません。
毎日、最低何時間眠れれば、心身の状態をキープできるか、何時間あれば最低限の家事育児ができるか、どの業務にどれくらいの工数を要するかという自分の生産性を、各自が把握しておくことが大切なのだと思います。
vol.10(最終回) — 人生の終わりに何を思い出したいか は、こちらに掲載しました。
▼連載初回では、「共働き家事育児」の総論(まとめ)を図解しています。